
「できない」を「できる」に変える声かけテクニック10選
自立支援介護読了時間:約8分
「もういいわ、やってちょうだい」「どうせ私にはできない」——介護の現場で、こんな言葉を聞いたことはありませんか?
実は、介護される方の意欲を左右する最大の要因は、介護者の「声かけ」です。何気ない一言が、本人の「やる気」を奪うこともあれば、「できる」という自信を引き出すこともあります。本記事では、自立支援介護に効果的な声かけテクニックを10個ご紹介します。
なぜ声かけが重要なのか?
介護が必要になると、多くの方が「自分は何もできない」という気持ちになりがちです。家族に迷惑をかけている、役に立たない存在だという思いが、さらに意欲を低下させる悪循環に陥ります。
この悪循環を断ち切るのが、適切な声かけです。言葉ひとつで、本人の自己効力感(「自分はできる」という感覚)を高め、行動を引き出すことができるのです。
💡 研究結果
リハビリテーション研究によると、ポジティブな声かけを受けた患者は、そうでない患者と比べて機能回復のスピードが平均30%早いことが報告されています。
NGな声かけ vs OKな声かけ

まず、よくあるNGな声かけとその理由を理解しましょう。善意から発した言葉でも、本人の意欲を奪ってしまうことがあります。
自立を促す声かけテクニック10選
テクニック①:命令ではなく「提案」する
❌ NG:「さあ、立ちなさい」
⭕ OK:「そろそろ立ってみましょうか?」
命令口調は本人の尊厳を傷つけ、受け身の姿勢を強化します。提案の形にすることで、本人に選択権があることを示し、自発的な行動を促します。
テクニック②:「できない」ではなく「まだできる」に注目
❌ NG:「もう歩けないから車椅子ですね」
⭕ OK:「手すりを使えば、まだ歩けますね」
「できないこと」を強調すると、本人は無力感を感じます。「まだできること」に焦点を当てることで、希望と意欲を保てます。
テクニック③:小さな成功を大いに褒める
❌ NG:「やっとできたのね」「これくらいはできて当然」
⭕ OK:「すごい!自分でできましたね!」
たとえ小さなことでも、本人にとっては大きな挑戦です。心から喜び、一緒に成功を祝うことで、次への意欲につながります。
テクニック④:過程を認める
❌ NG:「結果的にはできなかったわね」
⭕ OK:「一生懸命頑張りましたね。少しずつ進んでいますよ」
結果だけでなく、努力した過程を認めることが重要です。失敗しても「挑戦した」という事実を評価しましょう。
テクニック⑤:具体的に褒める
❌ NG:「頑張りましたね」(漠然としている)
⭕ OK:「今日は昨日より3歩多く歩けましたね!」
具体的に何が良かったのかを伝えることで、本人は自分の進歩を実感でき、さらなる意欲につながります。
テクニック⑥:比較は「他人」ではなく「過去の自分」と
❌ NG:「隣の○○さんはもっとできるわよ」
⭕ OK:「先月と比べて、随分できるようになりましたね」
他人との比較は劣等感を生みます。過去の自分と比べることで、確実な成長を実感してもらいましょう。
テクニック⑦:失敗を責めず、学びに変える
❌ NG:「だから言ったでしょう」「無理しないで」
⭕ OK:「挑戦してくれてありがとう。次はこうしてみましょうか」
失敗を責めると、挑戦する気持ちが失われます。失敗を学びの機会と捉え、次の成功への道筋を示しましょう。
テクニック⑧:選択肢を与える
❌ NG:「今からリハビリします」
⭕ OK:「今と午後、どちらがいいですか?」
選択肢を与えることで、本人の主体性を尊重します。小さな選択の積み重ねが、自己決定能力を保ちます。
テクニック⑨:「待つ」ことを言葉で伝える
❌ NG:(無言で待つ、または我慢できずに手を出す)
⭕ OK:「ゆっくりで大丈夫ですよ。待っていますから」
「待つ」という意思を言葉で伝えることで、本人は焦らず自分のペースで取り組めます。
テクニック⑩:感謝の言葉を伝える
❌ NG:「まあ、できて当たり前だけど」
⭕ OK:「自分でやってくれて、ありがとう」
「ありがとう」という言葉は、本人の行動に価値があることを伝えます。「役に立っている」という実感が、さらなる意欲を生みます。
場面別:効果的な声かけ実例集
食事の場面
- 「今日は自分で半分食べられましたね。素晴らしい!」
- 「お箸が難しければ、スプーンも用意しましょうか?」
- 「ゆっくりで大丈夫。むせないように気をつけてくださいね」
トイレの場面
- 「トイレまで一緒に歩いてみませんか?」
- 「手すりにつかまって、ゆっくり立ち上がってみましょう」
- 「自分でできるところまでやってみてください。必要な時は言ってくださいね」
着替えの場面
- 「今日はどちらの服を着ますか?」
- 「ボタンは難しいですね。マジックテープの服も試してみましょうか?」
- 「時間はたっぷりありますから、ゆっくり自分のペースでどうぞ」
声かけで注意すべきポイント
1. 子ども扱いしない
高齢であっても、人生の大先輩です。「○○ちゃん」などの幼児言葉や、過度に甘い口調は避け、敬意を持った言葉遣いを心がけましょう。
2. 否定語を避ける
「ダメ」「無理」「危ない」などの否定語は、本人の挑戦する気持ちを萎縮させます。できるだけポジティブな表現に言い換えましょう。
3. 本人のペースを尊重する
「早く」「急いで」などの言葉は、焦りとプレッシャーを与えます。時間に余裕を持ち、本人のペースで進められる環境を作りましょう。
4. 嘘をつかない
「簡単ですよ」と軽々しく言うのではなく、「難しいかもしれませんが、一緒にやってみましょう」と正直に伝えることが信頼関係を築きます。
声かけの効果が現れるまで
適切な声かけの効果は、すぐには現れないかもしれません。長年の習慣や、自己効力感の低下は、一朝一夕には変わりません。
しかし、毎日の小さな積み重ねが必ず変化を生みます。多くの事例では、2週間から1ヶ月程度で、本人の表情や行動に変化が見え始めます。
継続のコツ
- 家族間で声かけの方針を共有する
- 小さな変化を記録し、成長を見える化する
- 介護者自身も褒め合い、励まし合う
- 完璧を目指さず、できることから始める
まとめ:言葉が未来を変える
介護における声かけは、単なるコミュニケーション技術ではありません。本人の人生の質と、これからの可能性を大きく左右する重要な要素です。
「できない」を前提とした声かけは、本人の可能性を閉ざします。「できる」を信じた声かけは、本人の潜在能力を引き出します。
今日ご紹介した10のテクニックを、まずはひとつから試してみてください。あなたの言葉が、大切な方の笑顔と自信を取り戻すきっかけになるはずです。


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