「できることまで手伝ってしまい、いつの間にかご本人の力が落ちてしまった」――そんな経験はありませんか。介護には、手を貸すことも大切ですが、「本人の力を信じて、できることは見守る」という視点も同じくらい大切です。これが、理学療法士でもある竹内孝仁(たけうちたかひと)先生が提唱してきた「自立支援介護」の基本的な考え方です。難しい専門知識がなくても、ご家庭で今日から少しずつ取り入れられる工夫があります。今回は「水分・食事・排泄・運動」という4つの柱を、やさしくご紹介します。
① 水分――1日1,500mlを目安に、こまめに
高齢になると喉の渇きを感じにくくなり、気づかないうちに水分が不足しがちです。水分が足りないと、頭がぼんやりしたり、便が硬くなって出にくくなったり、意欲そのものが落ちてしまうことがあります。一般的な目安として、食事中の汁物やお茶とは別に、1日およそ1,500ml以上の水分をとることが望ましいとされています。
- 起床時・食間・入浴前後など、時間を決めてコップ1杯ずつ声かけをする
- 好きな飲み物(麦茶・番茶・薄いジュースなど)をいくつか用意し、選べるようにする
- ゼリー飲料や水分の多い果物で「食べながら水分補給」を組み合わせる
② 食事――1,500kcal以上・たんぱく質を意識して
「年をとったから少食でいい」と考えがちですが、実は加齢とともに体は多くの栄養を必要とします。エネルギーやたんぱく質が不足すると、筋力や体力が落ち、活動量そのものが減ってしまう悪循環につながります。目安として1日およそ1,500kcal以上、その中でも肉・魚・卵・大豆製品などのたんぱく質を意識してとることが大切とされています。
- 主菜(肉・魚・卵など)を毎食1品は必ず入れる
- 噛む・飲み込む力に合わせて、刻み方やとろみを調整する
- 「量より品数」ではなく「品数もカロリーも」を意識する
③ 排泄――自然な排泄を大切に
「失敗すると困るから」と早めにおむつに切り替えたくなる気持ちはよくわかります。ただ、トイレでの排泄を続けることは、立つ・座る・歩くといった動作そのもののリハビリにもなります。できる限り自然な排泄のリズムを支えることが、自立支援介護では重視されています。
- 時間を決めてトイレに誘う(起床後・食後など、排泄が起こりやすいタイミングを見つける)
- 水分・食事量を整えることで、便通そのものが整いやすくなる
- 「失敗してもいい」という前提で、焦らず見守る雰囲気をつくる
④ 運動――歩ける方は1日2kmを目安に
歩く力は、使わなければ想像以上に早く衰えていきます。逆に言えば、歩ける方が歩き続けることは、足腰の力だけでなく、食欲や睡眠、気分の張り合いにも良い影響を与えることがあります。目安として、歩ける方は1日2km程度の歩行を、無理のない範囲で続けることが勧められています。
- 散歩・買い物・庭仕事など、生活の中に「歩く場面」を増やす
- 一気にではなく、朝・昼・夕と分けて歩数を積み重ねる
- 天候や体調が悪い日は無理せず、室内での足踏みなどに切り替える
まとめ――「できること」を守る暮らしを、家族みんなで
自立支援介護は、特別な道具や高度な技術がなくても、家庭の中で少しずつ実践できる考え方です。水分・食事・排泄・運動という基本を整えることで、ご本人が持っている力を保ちやすくなり、結果として重度化を防ぎ、介護する家族の負担が和らぐことにもつながります。そしてそれは、限りある介護保険の資源を次の世代にも残していくことにもつながっていきます。無理をせず、ご家族のペースで、できることから始めてみてください。
出典・参考
- 竹内孝仁『自立支援介護』関連書籍・講演資料(一般的な考え方として紹介。詳細は書籍等をご参照ください)
- 介護保険サービスにおける自立支援・重度化防止に関する厚生労働省の基本方針(一般的な制度趣旨として紹介)
※本記事は一般的な情報提供であり、治療・効果を保証するものではありません。持病や水分・食事制限のある方は、必ず主治医や専門職にご相談ください。
