
誤嚥性肺炎を予防する食事介助の5つのポイント
重度化予防読了時間:約8分
高齢者の死因で常に上位にランクインする誤嚥性肺炎。実は、日々の食事介助の方法を見直すことで、大幅に予防できることをご存じですか?
誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液が誤って気管に入り、細菌が肺に感染して起こる肺炎です。嚥下機能が低下した高齢者に起こりやすく、重症化すると命に関わります。本記事では、誤嚥性肺炎を防ぐための食事介助の具体的なポイントを5つご紹介します。
誤嚥性肺炎とは?なぜ高齢者に多い?
通常、食べ物を飲み込む時には、気管の入り口が自動的にフタ(喉頭蓋)で閉じられます。しかし、加齢や病気により嚥下機能が低下すると、このメカニズムがうまく働かず、食べ物や飲み物が気管に入ってしまうことがあります。これを「誤嚥」と言います。
⚠️ 誤嚥性肺炎の恐ろしさ
- 高齢者の肺炎の約70%が誤嚥性肺炎
- 一度発症すると繰り返しやすい(再発率が高い)
- 体力が低下し、寝たきりや重度化の原因になる
- 重症化すると命に関わる
誤嚥が起こりやすい状況
- 脳卒中などで嚥下機能に障害がある
- 加齢による嚥下筋力の低下
- 認知症で食べ方が分からなくなっている
- 口腔内が不衛生(細菌が多い)
- 薬の副作用で唾液が少ない
- むせることが増えてきた
誤嚥のサインを見逃さない
以下のような症状が見られたら、誤嚥の可能性があります。
誤嚥のサイン
食事中や食後によくむせる 食事中にゴホゴホと咳き込む 食事に時間がかかるようになった 食後に声が「ガラガラ」と変わる 食事後に痰が増える 食欲が落ち、食べる量が減った 原因不明の発熱が続く(特に夜間) 口の中に食べ物が残る(飲み込めていない)
これらのサインが見られたら、主治医や言語聴覚士に相談しましょう。
誤嚥性肺炎を予防する5つのポイント
ポイント①:正しい姿勢で食べる
食事の姿勢は、誤嚥予防の最も重要なポイントです。正しい姿勢で食べることで、食べ物がスムーズに食道に流れ込みます。
理想的な食事姿勢
- 椅子の場合:
- 背筋を伸ばし、やや前傾姿勢(猫背にならない)
- 顎を少し引く(上を向かない)
- 足の裏が床にしっかりつく高さ
- 深く腰掛け、背もたれに寄りかからない
- テーブルと体の距離は拳1つ分
- ベッド上の場合:
- 上半身を60〜90度起こす(可能な限り90度が理想)
- 膝を軽く曲げ、足元にクッションを入れて体がずり落ちないようにする
- 顎を引く(枕で調整)
- 食後も30分〜1時間は起こしたままにする
❌ 避けるべき姿勢
- 完全に横になった状態での食事
- 上を向いた姿勢(顎が上がっている)
- 極端な前かがみ
- 体が傾いている
ポイント②:食事の形態を調整する
嚥下機能に合わせて、食事の硬さや大きさを調整することが重要です。「普通食が食べられる=誤嚥しない」ではありません。
嚥下しやすい食事の特徴
- 適度な粘度(とろみ)がある
- 口の中でまとまりやすい
- なめらかで飲み込みやすい
- べたつかない
- 水分と固形物が混在していない
段階的な食事形態
- 普通食:通常の固さ・大きさの食事
- 一口大・軟菜食:一口サイズで柔らかめ
- きざみ食:細かく刻んだ食事(とろみをつける)
- ミキサー食:ミキサーにかけてペースト状にした食事
- ゼリー食:ゼリー状に固めた食事
⚠️ 誤嚥しやすい食品
- サラサラした液体:水、お茶、汁物(とろみをつける)
- パサパサしたもの:パン、カステラ、クッキー
- バラバラになるもの:ひき肉、そぼろ、刻みネギ
- 噛み切りにくいもの:繊維質の野菜、イカ、タコ
- 薄い膜があるもの:トマトの皮、豆の皮
- 粘り気が強いもの:餅、団子、海苔
ポイント③:適切なペースと量で食べる
急いで食べると誤嚥のリスクが高まります。本人のペースを尊重し、焦らせないことが大切です。
食事介助の基本ルール
- 一口量:ティースプーン1杯程度(3〜5ml)から始める
- 間隔:完全に飲み込んだことを確認してから次の一口
- 確認方法:「ゴックン」という音、喉の動きを確認
- 声かけ:「次いきますよ」「ゴックンしてください」と伝える
- 時間:30分〜1時間程度で食べきれる量に調整
食事中の観察ポイント
- むせや咳き込みはないか
- 口の中に食べ物が残っていないか
- 疲れた様子はないか(休憩が必要)
- 声が変わっていないか(ガラガラ声は危険信号)
ポイント④:口腔ケアを徹底する
誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは、口の中に存在します。口腔内を清潔に保つことで、万が一誤嚥しても肺炎を予防できます。
効果的な口腔ケア
- 食後の歯磨き:毎食後必ず行う
- 舌のケア:舌ブラシで舌苔を除去
- うがい:できない場合は、スポンジブラシで口をすすぐ
- 義歯の清掃:毎食後外して洗浄
- 就寝前:特に丁寧にケア(夜間の唾液分泌が減り細菌が増えやすい)
口腔ケアは、誤嚥性肺炎予防だけでなく、食欲増進や味覚の改善にもつながります。
ポイント⑤:嚥下体操で飲み込む力を維持する
嚥下に関わる筋肉を鍛えることで、飲み込む力を維持・向上させることができます。食事前に行うと効果的です。
食事前の嚥下体操(5分)
①深呼吸(2回)
鼻から大きく息を吸い、口からゆっくり吐く
②首の体操
首を前後左右にゆっくり倒す、回す(各5秒×2回)
③肩の体操
肩を上げ下げする、回す(各5回)
④頬の体操
頬を膨らませる→へこませる(5回)
⑤舌の体操
- 舌を前に出す、引っ込める(5回)
- 舌を左右に動かす(5回)
- 舌で唇をなめるように回す(左右各3回)
⑥発声練習
「パ・パ・パ」「タ・タ・タ」「カ・カ・カ」と大きな声で(各5回)
⑦唾液腺マッサージ
耳の下、顎の下を優しくマッサージ(各10回)
⑧空嚥下(空飲み込み)
唾液を意識的に飲み込む練習(3回)
とろみのつけ方と注意点
水分にとろみをつけることで、ゆっくり流れるため誤嚥しにくくなります。
とろみの段階
- 薄いとろみ:フレンチドレッシング程度(飲み込みやすい)
- 中間のとろみ:とんかつソース程度
- 濃いとろみ:マヨネーズ程度(重度の嚥下障害向け)
とろみ剤の使い方
- 適量のとろみ剤を飲み物に振り入れる
- 素早くしっかりかき混ぜる(ダマにならないように)
- 1〜2分待って、とろみが安定するのを確認
- スプーンですくって、とろとろ落ちる程度を確認
💡 とろみづけのコツ
- 飲み物の温度で必要な量が変わる(温かいほど少なめ)
- 一度につけすぎず、足りなければ追加する
- 時間が経つと固くなる製品もあるので、飲む直前につける
- 果汁100%ジュースはとろみがつきにくい
もしむせてしまったら
食事中にむせた場合の対応も知っておきましょう。
軽いむせの場合
- 食事を中断し、落ち着くまで待つ
- 前かがみにして、背中を軽くさする
- 咳が収まったら、ゆっくり深呼吸
- 少し休憩してから再開
激しくむせて苦しそうな場合
- すぐに食事を中止
- 前かがみにして、背中を強めに叩く(背部叩打法)
- それでも改善しない場合は、腹部突き上げ法(ハイムリック法)
- 意識がない、呼吸が止まった場合は、すぐに119番通報
専門家に相談すべきタイミング
以下のような状況では、医師や言語聴覚士に相談しましょう。
- むせる回数が明らかに増えた
- 体重が減少している
- 食事を嫌がるようになった
- 食事時間が極端に長くなった(1時間以上)
- 原因不明の発熱が続く
- 嚥下評価(VF検査、VE検査)を受けたことがない
まとめ:毎日の積み重ねが命を守る
誤嚥性肺炎の予防は、特別なことではありません。毎日の食事介助の中で、5つのポイントを意識するだけで、大幅にリスクを減らせます。
5つのポイント再確認
- 正しい姿勢:上半身を起こし、顎を引く
- 適切な食事形態:嚥下機能に合わせて調整
- 適切なペース:一口ずつ、確認しながら
- 口腔ケア:毎食後の歯磨き・口腔清掃
- 嚥下体操:食事前の5分間体操
誤嚥性肺炎は、命に関わる重大な病気です。しかし、適切な知識と日々のケアで予防できます。大切な家族の笑顔と健康を守るために、今日から実践してみましょう。


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